【美の巨人たち 感想】 速水御舟 「名樹散椿」


2013年3月23日 放送



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今週の芸術家


・作者 速水御舟(1894-1935)
・国籍 日本
・職種 画家


1894年 質商、蒔田良三郎の次男として東京市浅草区に誕生
1905年 市立育英小学校高等科へ入学
1908年 松本楓湖の安雅堂画塾に入門。団栗会を結成
1909年 楓湖から禾湖の号を頂く
1910年 巽画会展に「小春」、烏合会展に「楽人」を出品
1911年 巽画会展に「室寿の讌」を出品。紅児会に入会
1912年 号を浩然と改める
1913年 紅児会が解散する
1914年 号を御舟と改め、この頃から姓を速水とする
1917年 第4回院展に「洛外六題」を出品
1919年 交通事故により左足切断
1921年 結婚
1923年 関東大震災により多くの作品が焼失
1925年 軽井沢に滞在中、「炎舞」を完成させる
1929年 第16回院展に「名樹散椿」を出品
1930年 ローマ日本美術展覧会の美術使節として渡欧
1935年 チフスで急逝


今週の作品


・作品 名樹散椿(1929)
・場所 
・縦横 167.9x169.6
・材質 紙本金地・彩色・屏風(2曲1双)



描かれているのは金地を背景に、色とりどりの花を咲かせる椿の姿。京都の地蔵院にあった五色八重の散椿をもとに描いたと伝えられています。しっとりとした緑の苔山。そこに生える太い幹からは、のたうつように右から左へと枝が大きく伸びています。咲いている花の色は薄桃、白、まだら、紅色と様々。それが、なだらかな苔山の上にひとひらひとひらと散っています。

雑感

金というと、秀吉の茶室や中尊寺金色堂などが思い浮かびます。しかし豪華絢爛・荘厳華麗といった印象は受けても、「気品がある」かというと、ちょっと違う気がするのです。そもそも、それは金(gold)というものの性質なのだろう、と思っていたので、今週の「名樹散椿」 や速水御舟の描く金の気品は実に刺激的でした。

日清戦争が1894年、日中戦争の始まりが1937年なので、速水御舟の生きていた日本は連戦好調の時代、派手な金が好まれる時代です。もちろん、技法や題材に依るところも大きいのでしょうが、そんな時代に創られた趣きのある金色というのも魅力の一つではないでしょうか。