『代表的日本人』内村鑑三

評価★★★★☆



著者/内村鑑三
宗教家・評論家。高崎の人。札幌農学校出身。教会的キリスト教に対して無教会主義を唱えた。教育勅語への敬礼を拒みいわゆる不敬事件を起し、また非戦論を唱道。雑誌「聖書之研究」を創刊。著「基督信徒の慰め」「求安録」など。

目次

1.西郷隆盛−新日本の創設者
 1 一八六八年の日本の維新
 2 誕生、教育、啓示
 3 維新革命における役割
 4 朝鮮問題
 5 謀反人としての西郷
 6 生活と人生観
2.上杉鷹山−封建領主
 1 封建制
 2 人と事業
 3 行政改革
 4 産業改革
 5 社会および道徳の改革
 6 人となり
3.二宮尊徳−農民聖者
 1 今世紀初頭の日本農業
 2 少年時代
 3 能力の試練
 4 個人的援助
 5 公共事業一般
4.中江藤樹−村の先生
 1 昔の日本の教育
 2 少年時代と自覚
 3 母親崇拝
 4 近江の聖人
 5 内面の人
5.日蓮上人−仏僧
 1 日本の仏教
 2 生誕と出家
 3 暗黒の内と外
 4 宣言
 5 ひとり世に抗す
 6 剣難と流罪
 7 最後の日々
 8 人物評



雑感

本書は、内村鑑三により1908年に刊行された、"Representative Men of Japan"の新訳版です。内容は、タイトルの通り、「代表的日本人」として西郷隆盛上杉鷹山二宮尊徳中江藤樹日蓮上人の5人をあげ、その生涯を、内村による解説を混じえて叙述する形になっています。

そもそも本書は、1894年に刊行された、"Japan and the Japanese"を元に、加筆修正されたものです。しかも、その修正箇所は非常に多い。なぜそんなにも手を加えたのかというと、日清戦争の前後で内村鑑三の思想が著しく変化したからだそうです。つまり、"非戦論"を唱え始めたのは日清戦争を境にしてのことだったようです。

戦争反対なクリスチャンのイメージが内村鑑三でしたので、「義戦」を訴えて、この5人を選んだのかと思うと、なかなか興味深いものがあります。