効率的なトレーニング/谷本道哉『スポーツ科学の教科書』

評価★★★☆



著者/谷本道哉
静岡県出身。大阪大学工学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。学位論文の題は 「筋発揮張力維持法を取り入れたトレーニングに関する研究。

はじめに

スポーツ競技で、より強く・うまくなるためにはどうしたら良いのでしょうか?運動生理学、機能解剖学、スポーツバイオメカニクス、トレーニング科学、スポーツ栄養学、健康科学の観点から、スポーツの現場で生じる疑問に一問一答式で答え、わかりやすく解説します。


ポイント

・スポーツにおけるシャウト効果
シャウト効果で実際に発揮筋力を高めることが可能です。ただし闇雲に大声を上げればいいわけではありません。大声を上げることで興奮性を高めることが重要です。また、持久的要素のある競技などではやたらとシャウトを行うべきではありません。

有酸素運動無酸素運動と脂肪燃焼効果
有酸素運動は運動時の脂質利用率の高い運動であり、高強度の無酸素運動は運動中には脂質をほとんど使いませんが、運動後に脂質利用の高くなる運動です。有酸素運動が脂質減量に効果的であるのは、比較的用意にたくさんのエネルギーを消費できるからと考えられます。

・体脂肪の役割は?
体脂肪には、エネルギーの貯蔵、保湿作用などの役割があり、必ずしも無駄な組織というわけではありません。スポーツにおいては極力減らしたい場合、同時に筋肉量を増やせるならあある程度脂肪がついていても構わない場合など、競技によりさまざまです。

・どうして競技練習以外のトレーニングが必要なのか
競技練習だけでは得られない高い結果を得るために行うのが補強としてのトレーニングです。スポーツの競技練習では与えることができないような強い負荷を筋肉に与えられることに筋トレを行う意義があり、競技の練習よりもずっと心拍数が上がるような高い心肺耐久的負荷を与えられることに持久トレーニングの意義があるのです。

・ストレッチすると身体の何が変わるのか?
ストレッチでじっくりと筋肉を伸ばすと、神経的要因、物理的要因などから筋肉が柔らかく伸びやすくなり、関節可動域が広げます。また、疲労や不必要でこわばった筋肉をほぐす効果もありますので、筋肉を快適に保つコンディション効果も期待できます。

・汗をかいても痩せないってホント?
汗をかくと水分が抜けるので一時的に体重は減ります。しかし身体の水分量は一定に保たれていますので減った水分はすぐに戻ります。汗をかいても痩せられないのです。なお、「汗をたくさんかくような消費エネルギーの大きい運動」で体脂肪は減りますが、これは結局は運動の効果。「汗をかくことで痩せる」わけではありません。

・「規則正しく」食べることが大切な理由は?
規則正しい「食事のリズム」は、体内時計を司る「時計遺伝子」の重要な調整因子。現代人に多く見られる「夜更かし、朝食抜き」の習慣は、時計遺伝子の正常な発言を見だしてしまいます。