【美の巨人たち 感想】 ルノワール『浴女たち』


2013年1月19日 放送



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今週の芸術家


・作者 ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)
・国籍 フランス
・職種 画家


1841 1歳 フランス中南部リモージュの仕立屋の家に生まれる。
1843 3歳 パリに移住
1854 13歳 陶器の工房に絵付職人として徒弟奉公に入る。
1861 19歳 エコール・デ・ボザールのシャルル・グレールの画室に入る。*1
1967 25歳 『狩りのディアナ』発表。クールベの影響を受けた。
1972 30歳 アルジェリア風のパリジェンヌ』発表。*2
1874 32歳 第一回印象派展『桟敷』など7点を出品した。
1876 34歳 第二回印象派展『陽光を浴びる裸婦』など15点を出品。
1877 35歳 第三回印象派展『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』など22点を出品。
1879 37歳 第四回印象派展の出品を拒否、印象派との決別
1881 39歳 イタリアへ旅行。ラファエッロらの古典に影響を受ける。
1885 43歳 長男ピエール誕生
1890 48歳 アリーヌと正式に結婚
1894 52歳 次男ジャン誕生
1897 55歳 『眠る浴女』発表。*3
1900 57歳 レジオン・ドヌール勲章を授与される。
1901 60歳 三男クロード誕生
1903 62歳 南フランスのカーニュ・シュル・メールに移住。
1918 77歳 浴女たち』制作
1919 78歳 死去


今週の作品


・作品 浴女たち(1918)
・場所 オルセー美術館
・縦横 110×160cm
・材質 油彩・画布


陽光降り注ぐ新緑の上に、二人の乙女がゆったりと体を横たえています。
画面奥の池では、楽しげに戯れる三人の女性。
だとすると、横たわる二人は、今しがた水浴びを終えたばかりでしょうか。
日の光を浴びて全身がまるで輝きを放っているかのようです。
とりわけ目をひくのは、はちきれんばかりの豊満な肉体。
画家が魅了された女性の体の曲線が、伸びやかな筆使いで大胆に描かれています。
楽園を彩る草木や澄み渡る空の青、木々も、空も、大地も、肌の色も、一つに溶け合い光り輝く色彩の競演。

雑感

余りに豊満な裸婦像です。もはや、風景画ではないかと感じてしまいます。
女性の線と山々の稜線が重なり、手が不自由だったからでしょうか、色彩も印象主義を思わせます。この裸婦たちは、『パリスの審判』で描かれた女神以上に神秘的ではないでしょうか。

円熟期の肉感的な裸婦や愛らしい少女たちは、良い意味で世俗的です。

ルノワールは、死の間際まで作風を進化させ続けたのでしょう。
ルノワール自身、本作に対して「生涯において探求した絵画表現の融合的作品」と言葉を残しており、生涯最高の作品と位置付けていたそうです。

手が動かずとも描き続けた執念、死の間際まで持ち続けた向上心たるや、感嘆敬服の念を禁じ得ません。


*1:モネ、シスレー、バジール、そして彼らを通じてピサロセザンヌらと出会う。

*2:ドラクロワの影響を受けた。

*3:印象主義と古典的構図や質感の表現との調和したルノワール独特の傑作。