天才ボビー・フィッシャーの生涯/『完全なるチェス』フランク ブレイディー
評価★★★★
著者/フランク ブレイディー
ニューヨーク、ブルックリンの出身。1960年に編集者として「チェス・ライフ」誌を創刊。NYの名門マーシャル・チェス・クラブの代表も務めた。NYのセント・ジョーンズ大学コミュニケーション学部長を経て、現在も同大の教授職にある。作家としては、チェス関連の本のほかに、著名人の評伝を数多く手掛ける
はじめに
二十年にもわたって姿を消していたチェス世界チャンピオンは往年のライバルと対戦すると、ふたたび消息を絶った―。クイーンを捨て駒とする大胆華麗な「世紀の一局」を十三歳で達成。冷戦下、国家の威信をかけてソ連を破り、世界の頂点へ。激しい奇行、表舞台からの失踪、そしてホームレス寸前の日々。アメリカの神童は、なぜ狂気の淵へと転落したのか。少年時代から親交を結んできた著者が、手紙、未発表の自伝、KGBやFBIのファイルを発掘して描いた空前絶後の評伝。
年表
1943 | イリノイ州シカゴ生まれ |
1949 | 姉ジョーンにチェスを教わる |
1951 | ブルックリン・チェスクラブに入る。 |
1955 | 公式戦初参戦 |
1955 | マンハッタン・チェスクラブに入る |
1957 | インターナショナルマスターになる |
1958 | グランドマスターになる |
1970 | ソ連対世界戦 |
1972 | 世界選手権優勝 |
1975 | 連盟と対立し防衛戦を放棄、タイトルを剥奪される。 |
1992 | スパスキーと再戦、国外追放処分 |
2004 | 成田空港にて入管法違反の疑いで収容 |
2008 | アイスランドの首都レイキャビクの病院で死去 |
感想
元世界チャンピオンにして「冷戦の英雄」ボビー・フィッシャーの伝記。チェスプレイヤーとしてのフィッシャーを知らない人でも、2004年の成田での事件を覚えている人はいるのではでしょうか。
親交のあった友人による評伝だけあり、邦訳されているなかでは最も詳しく、内容も興味深いものでした。専門用語は殆どなく、平易な文で書かれているので、チェスを知らない人でも十分楽しめるものと思います。
しかし、それだけにチェス好きからすると少々物足りない。せめて主要な対局の棋譜くらいは載せて欲しかった。華麗なクイーン・サクリファイスと言われても、どうしても説得力に欠けてしまうのです。
もちろん、伝記としては大変面白いですし、棋譜については他サイトを併用すればよいでしょう。日本が重要な舞台として登場することですし、日本のチェスプレイヤーには是非読んでいただきたい一冊です。