〈モチベーション2.0〉の衰退/ダニエル・ピンク『モチベーション3.0』



著者/ダニエル・ピンク
アメリカ合衆国の作家で、ビル・クリントン政権下のロバート・ライシュの補佐官を経て、1995年から1997年までアル・ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた。その後、フリーエージェントを宣言して、ニューヨーク・タイムズワシントン・ポストなどの記事や論文を執筆している。


目次

 第1章 <モチベーション2.0>の盛衰
 第2章 アメとムチが(たいてい)うまくいかない7つの理由
 第2章の補章 アメとムチがうまくいく特殊な状況
 第3章 タイプIとタイプX

  • 第2部 <モチベーション3.0>3つの要素

 第4章 自律性
 第5章 マスタリー(熟達)
 第6章 目的

  • 第3部 タイプIのツールキット

はじめに

人間を行動に駆り立てるものは何か?
著者は、コンピューターのOS(オペレーションシステム)のように人間を支配する基本的な概念があり、それをもとに法律や社会的慣習、経済制度が造られてきたと主張する。そして、その制度は時代遅れになるとアップグレードが繰り返されてきたという。


〈モチベーション1.0〉…原始時代の人類は、食料を得る、外敵から身を守る、生殖を行う、などの「生理的要因」に基づいて行動していた。これは動物と大差がないが、初期の人類にとって役に立ち、十分な効果を発揮した。

  • 狩猟、生殖活動…

 
〈モチベーション2.0〉…複雑な社会を形成するにつれ、共同体としてのルールが必要になった。このアップグレードは、「報酬を求める一方、罰は避けたい」という人間第二の動機づけを土台に行われた。

  • 優秀なものに見返りを与え、成績の芳しくないものには処罰を与える。

〈モチベーション3.0〉…より複雑に発展した現在では、〈モチベーション2.0〉も機能しておらず、新たなOSへのアップグレードが必要だと著者は訴えている。〈モチベーション3.0〉とは、「学びたい、創造したい、世界をよくしたい…」といった内発的な動機づけのこと。社会や企業はこれに適した環境を作り、個人は〈2.0型〉から〈3.0型〉に考え方を移行すべきだという。

〈モチベーション2.0〉の欠陥

ルーチンワークなどの創造性の必要ではない"原始的"な作業など、〈モチベーション2.0〉が有用が状況はある。しかし、〈モチベーション3.0〉と比べ以下のような欠陥がある。

  • 内発的動機づけを失わせる。
  • かえって成果が上がらなくなる。
  • 創造性を蝕む。
  • 好ましい言動への意欲を失わせる。
  • 依存性がある。
  • 短絡的思考を助長する。

〈モチベーション3.0〉に移行するための3要素

自律性
  • 課題(自由に課題が決められること)
  • 時間(時間の融通がきくこと)
  • 手法(手法が自由に選べること)
  • チーム(自由なチームが組めること)
能力の熟達
  • 努力(能力の熟達の為の努力を惜しまないこと)
  • 根性(壁にぶつかっても投げ出さない根性があること)
  • 漸近線(完全はないと理解すること)
目的
  • 目標(利益を媒介にして、何を目指すのか)
  • 言葉(メリット、価値から名誉・愛といった言葉へ)
  • 指針(道徳的に正しい指針を設ける)
注意点
  • 金銭や他社からの評価を軽視しているわけではない、最低基準の環境は必要である。
  • 長期的には高い成果を上げることが多いが、短期的には成果が上がらないこともある。

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