【美の巨人たち 感想】 安本亀八 「相撲生人形」


2013年1月26日 放送



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今週の芸術家


・作者 安本亀八(1826-1900)
・国籍 日本
・職種 仏師、人形師


1826 1歳 熊本迎宝町(現在の熊本市)の仏師の家に誕生。
1852 27歳 大坂の難波新地にて、生人形「いろは比喩」発表。
1868 43歳 神仏分離令廃仏毀釈運動のはじまり。
1870 45歳 大坂難波新地南にて「東海道五十三次道中生人形」の見世物興行
1875 50歳 上海で興行を行う。
1877 52歳 内国勧業博覧会に等身大の美貌の活人形を出展。
1880 55歳 内務省博物局開設の「観古美術会」に参加、審査員をつとめる。
1893 68歳 西南戦争を話題にした「一世一代鹿児島戦争実説」発表。
1898 73歳 初代・亀八改め亀翁に改名。長男の亀二郎が二世・亀八を襲名。
1899 74歳 長男が鹿児島で客死。三男が三世を襲名する。
1900 75歳 死去。墓は世田谷区烏山の高龍寺にある。


今週の作品


・作品 相撲生人形 野見宿禰当麻蹶速(1890)
・場所 熊本市現代美術館蔵 
・縦横 170x150x160cm
・材質 桐


色白の力士 野見宿禰が、浅黒い力士 当麻蹶速を今まさに投げ飛ばさんとしています。巨大な生き人形です。直立を想定した身長は2体とも2メートルを超えています。この相撲生き人形は『日本書紀』に記された最古の相撲試合から題材が取られています。大和の国の当麻蹶速と出雲の国の野見宿禰が、垂仁天皇の御前で死闘を繰り広げているのです。
野見宿禰は、当麻蹶速の腰に右手を回し、左手で首を掴み必死に投げ飛ばそうとしています。……
その迫真の肉体を作り上げているのは、超絶技巧とよばれた筋肉や皮膚の細部の作りこみです。2体の人形のダイナミックな動きの造形は、絶妙なバランスを取りながら自立しているのです。戦う肉体がぶつかり勝負が決する瞬間の圧倒的なリアリティ。これが幻の傑作とよばれた生き人形。

雑感

生き人形は、芸術か娯楽か?

材質は桐、しかも中を繰り抜いているため軽く、寄木で造られているので釘一本も必要ない。これは持ち運びの利便性や人形の耐久性のため。これだけのリアリティを誇りながら、娯楽としての実用性が第一。

美術品ではなく見世物。
だから、新しい娯楽*1の登場によって消えてしまった。

『相撲生き人形』が完全な状態で残されていたのは、アメリカの美術館に収蔵されていたことが幸いしたそうです。生き人形のような、今日の美術が忘れ去った芸術というものは、少なくないのかもしれませんね。


今日のナビゲーターは、田中久重 の「文字書き人形」以来の「文字書き人形と弓曳き童子」の二人でした。こういった、チープなキャラは(良い意味で)美の巨人たちの魅力的なところだと思うので、また忘れた頃に出してもらいたいですね。

最近だと、ベルニーニのときの彫刻探偵や菱川師宣のときのデザイナーあたりが良い味でてたと思います。


*1:映画…