【美の巨人たち 感想】 円空「両面宿儺坐像」
今週の芸術家
・作者 円空(1632-1695)
・国籍 日本
・職種 僧侶
1632 | 0歳 | 美濃国竹ヶ鼻(岐阜県羽島市)に生まれる。 |
1650 | 19歳 | 長良川の大洪水で母を失う。 |
1654 | 23歳 | 若くして出家する。 |
1663 | 32歳 | 岐阜県郡上市・神明神社の神像三体を造顕。 |
1666 | 35歳 | 津軽藩の弘前城下を追われ、青森経由で松前に渡る。 |
1667 | 36歳 | 蝦夷に渡り、多数の仏像を彫る。 |
1669 | 38歳 | 美濃・飛舞地方に戻る。 |
1674 | 43歳 | 志摩半島に渡る。 |
1679 | 48歳 | 郡上市を訪れ諸像を造顕。 |
1684 | 53歳 | 美濃に戻り、円盛より天台円頓菩薩戒の血脈を受ける。 |
1686 | 55歳 | 長野県南木曽町・等覚寺を訪れ、天神像・弁財天を造顕。 |
1689 | 58歳 | 滋賀県米原市・太平寺を訪れ、十一面観音像を造顕。 |
1695 | 64歳 | 死去 |
今週の作品
・作品 両面宿儺坐像(17世紀)
・場所 東京国立博物館
・高さ 87cm
・材質 あすなろの木
険しい岩にどっかと座り、手には斧、そして、1つの体に2つの顔。
これが両面宿儺です。
目はつり上がり、髪は逆立っています。背面には炎がほとばしるように渦巻く。
本の手と2つの顔を持つ怪物。でも、その顔をよく見てみてください、恐ろしいだけではないことに気づきます。向かって右の顔は憤怒、怒りの顔です。しかし、正面を向いているこちらの顔は、少し微笑んでいるように見えませんか?こちらの顔は、慈悲に満ちた心を示すといいます。
なぜ怪物が慈悲の顔を見せてるのか?
雑感
円空は、つねに諸国遍歴の旅を続け、訪れた土地の山林の木を素材にして、生涯で12万体もの仏像を彫り続けたそうです。
その円空仏は、表面には何も塗らず、木を割った時の切断面やノミ跡など、原材における制約をそのまま利用することが多いのですが、これは清貧に生きた遊行僧ゆえの工夫だといいます。
雑ではなく、大胆。
12万体もの仏像を彫り続けられた理由が、作品に深みを与える理由でもある、というのは非常に興味深いです。
作品の題材になった両面宿儺(りょうめんすくな)も、歴史を考えさせられる逸話でした。"大和朝廷に従わなかった凶族"であり、"飛騨の英雄"でもあった両面宿儺。歴史に善悪はありませんが、日本に限らず、こういった見えない歴史は少なくないのでしょうね。