【美の巨人たち 感想】 円空「両面宿儺坐像」


2013年2月2日 放送



TV TOKYO 公式サイトへ


今週の芸術家


・作者 円空(1632-1695)
・国籍 日本
・職種 僧侶


1632 0歳 美濃国竹ヶ鼻(岐阜県羽島市)に生まれる。
1650 19歳 長良川の大洪水で母を失う。
1654 23歳 若くして出家する。
1663 32歳 岐阜県郡上市神明神社の神像三体を造顕。
1666 35歳 津軽藩弘前城下を追われ、青森経由で松前に渡る。
1667 36歳 蝦夷に渡り、多数の仏像を彫る。
1669 38歳 美濃・飛舞地方に戻る。
1674 43歳 志摩半島に渡る。
1679 48歳 郡上市を訪れ諸像を造顕。
1684 53歳 美濃に戻り、円盛より天台円頓菩薩戒の血脈を受ける。
1686 55歳 長野県南木曽町・等覚寺を訪れ、天神像・弁財天を造顕。
1689 58歳 滋賀県米原市太平寺を訪れ、十一面観音像を造顕。
1695 64歳 死去


今週の作品


・作品 両面宿儺坐像(17世紀)
・場所 東京国立博物館
・高さ 87cm
・材質 あすなろの木


険しい岩にどっかと座り、手には斧、そして、1つの体に2つの顔。
これが両面宿儺です。
目はつり上がり、髪は逆立っています。背面には炎がほとばしるように渦巻く。
本の手と2つの顔を持つ怪物。でも、その顔をよく見てみてください、恐ろしいだけではないことに気づきます。

向かって右の顔は憤怒、怒りの顔です。しかし、正面を向いているこちらの顔は、少し微笑んでいるように見えませんか?こちらの顔は、慈悲に満ちた心を示すといいます。

なぜ怪物が慈悲の顔を見せてるのか?

雑感

円空は、つねに諸国遍歴の旅を続け、訪れた土地の山林の木を素材にして、生涯で12万体もの仏像を彫り続けたそうです。

その円空仏は、表面には何も塗らず、木を割った時の切断面やノミ跡など、原材における制約をそのまま利用することが多いのですが、これは清貧に生きた遊行僧ゆえの工夫だといいます。


雑ではなく、大胆。
12万体もの仏像を彫り続けられた理由が、作品に深みを与える理由でもある、というのは非常に興味深いです。


作品の題材になった両面宿儺(りょうめんすくな)も、歴史を考えさせられる逸話でした。"大和朝廷に従わなかった凶族"であり、"飛騨の英雄"でもあった両面宿儺。歴史に善悪はありませんが、日本に限らず、こういった見えない歴史は少なくないのでしょうね。