新約聖書について

読む前に押さえておきたいポイント

新約聖書の構成(計27書)

福音書マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネによるイエス・キリストの伝記1.マタイによる福音書
2.マルコによる福音書
3.ルカによる福音書
4.ヨハネによる福音書
使徒言行録エスの弟子たちの活動の記録5.ルカによる初代教会史
書簡集信仰や生活についてイエスの弟子たちが書き残したもの6.ローマ人への手紙
7.コリント人への第一の手紙
8.コリント人への第二の手紙
など計21巻
啓示の書預言書27.ヨハネの黙示録

重要人物の整理

ナザレのイエスナザレ(地名)のイエスの意
聖母マリアエスの母、カトリックでは信仰対象
大工のヨセフエスの父、ダビデの系列
洗礼者ヨハネエスに洗礼を与えた聖者、同じ名前が多い
初代教皇ペトロ十二使徒のリーダー格
伝道者パウロユダヤ教から改宗、伝道に大きな役割を果たした
福音書のマタイ十二使徒のマタイではない
福音書のマルコ福音書筆者、ペトロの弟子 兼 通訳
福音書のルカパウロの友人、医者
福音書ヨハネ黙示録の筆者のヨハネではない


おおまかな内容

非信徒でも、旧約聖書は「イスラエル国史」として読むことができます。しかし新約聖書は、歴史書よりも宗教書としての色合いが非常に強く、しかも内容の多くは奇跡やたとえ話を用いた説教です。これは、論理的に教義・戒律を記す『コーラン』などと比べ、非信徒にとっては少々やっかいな装飾です。

そこで以下を目次に見立て、できる限り宗教的な特性を踏まえつつ、物語的に新約聖書の"あらすじ"を拾い出します。

1.イエスの誕生
2.ヨハネの洗礼
3.イエスの運動
4.ユダヤ教徒との対立
5.死刑
6.復活
7.キリスト教の誕生


エスの誕生

・天使ガブリエルがマリアにイエス・キリストの誕生を告げる
ユダヤの王ヘロデの知るところとなり、一族でエジプトへ逃れる
・ヘロデの死後戻り、ガリラヤの町ナザレで青年時代を過ごす。

ヨハネの洗礼

ヨルダン川のほとりにヨハネという聖者がおり、民衆はメシアだと信じていた。
ヨハネは自身は先駆けにすぎず、他に相応しいものが現れると説教していた。
ヨハネがイエスを洗礼する。
・洗礼後、荒野で修行などを行い、悪魔に打ち勝ち、神の啓示を受ける。

宣教活動

・ガラリア湖付近で宣教活動をし、弟子ができる。
・病気を治したり、死者を蘇らせるなど、多くの奇跡を起こす
・病人や罪人にも救いの手を差し伸べる
ユダヤ教の律法学者や指導者たちは、ユダヤ的でない「イエスの思想」に危機感を募らせる。
・また、保守的なユダヤ人が求めている英雄的救世主像との乖離が目立ちはじめる。

ユダヤ教徒との対立

・死を覚悟のうえで、ガリラヤを離れエルサレムへ向かう。
・理由は、過ぎ越しの祭*1のためであり、このときユダが裏切ることを予言する
・翌日、ユダが銀30枚でユダヤ教の祭司らに引き渡す手引きをする。
・ペテロの「3度の知らない」もこのとき。

十字架に貼付けられたイエス

・民衆(ユダヤ人)の声に押されイエスの死刑が決まる。
・執政官に躊躇した描写があるのは、ローマ人のことを悪く書けなかったため?
・十字架を背負わされ、ゴルゴダの丘まで引き立てられていく。
・最後の言葉は、「我が神、我が神、なぜ私を見捨てたのか」

復活

・死刑から3日後、イエスは復活する。
マグダラのマリアが墓からイエスがいなくなったことを目撃する。
・数人の弟子の前に現れる。
・後に昇天し、神の国に向かった。

キリスト教の誕生

・イエスの死後、福音を広めるため奔走する。
キリスト教団の設立
ユダヤ教から改宗したパウロは特に尽力した。
パリサイ派の教育を受けていたパウロは、イエスの教えの理論化を
・戒律遵守を批判
理論的発展を基礎付けたのはパウロ書簡およびヨハネによる福音書である。

その後

結果キリスト教は、世界人口の30%を超えるまでに広がります。
しかし、その過程の物語である「教会と国家の権力をめぐる争奪」や「キリスト教内部での争い」などは、複雑で錯綜したものです。

その内容はこちらをご覧ください。

*1:モーセの十災に由来するユダヤ教の祭り