旧約聖書について

創世記について

創世記とは、タナハ(=旧約聖書)を編纂する文書のうちの一つであること。

タナハの構成(計39書)

トーラー
律法書
天地創造からモーセの死までの歴史書創世記
出エジプト記
レビ記
民数記
申命記
ネビーム
前の預言書
カナン(地名)に到着してからバビロン捕囚までの歴史書ヨシュア
士師記
サムエル記
列王記
ネビーム
後の預言書
預言者を介した神のことばの編纂イザヤ書
エレミア書
など計15巻
ケトゥビーム
諸書
歴史や神の賛歌が詩歌の形式で書かれているヨブ記
歴代誌
など計12巻
※サムエル記・列王記・歴代誌は上下巻


宗教の分類方法

創唱宗教特別な一人(ないしグループ)の創唱者によって提唱された宗教のこと。
自然宗教自然発生的に発生し伝播の範囲が特定の民族・地域に限定されている宗教のこと。
前者は、仏教・キリスト教イスラム教など
後者は、神道ユダヤ教などが挙げられます。



日本に『古事記』や『日本書紀』があるように、およそ全ての民族が自分たちの起源を語る"神話"を持っています。これは、ユダヤ人の経典である『タナハ』も同様です。

そして、『タナハ』における神話部分が「アダムとイヴ」や「ノアの方舟」でおなじみの『創世記』です。



『創世記』の構成

  1. 神による天地創造
  2. アダムとイヴの誕生と楽園からの追放
  3. カインとアベル
  4. 大洪水とノアの箱舟
  5. バベルの塔の崩壊と共通言語の喪失
  6. 族長の時代

順にポイントを箇条書き*1にしていきます。


神による天地創造


「 神は第七日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第七日に休まれた。
創世記2-2」


・1日目 光と時間の創造
・2日目 空と地の創造
・3日目 植物の創造
・4日目 天体の創造
・5日目 魚と鳥の創造
・6日目 動物と人間(アダム)の創造
・7日目 万象の創造を終え、休んだ。

・その後、エデン(平地の意)に一つの園を設け、人(アダム)に守らせた。


アダムとイヴの誕生と楽園からの追放


「 蛇は女に言った、『あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです。』
創世記3-5」


・創られた人の名前はアダム(男)、アダムの肋骨からイヴ(女)が創られた。
・園には「善悪を知る木」があり、その実を食べることを禁じられていた。
・蛇に唆され、イブが禁じられた木の実を食べてしまう。
・イブにつられてアダムも木の実を食べてしまう。
・神の知るところとなり、アダムには労働の苦しみ、イブには出産の苦しみを与え、園から追放した。


カインとアベル


「 しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。
創世記4-5」


・アダムに二人の息子、カイン(兄)とアベル(弟)」が産まれた。
・カインは畑を耕し、アベルは羊を飼った。
・ある日、ふたりは供物の優劣を競った。
・神が選んだのはアベルの羊だった。
・嫉妬したカインは、アベルを殺してしまう。
・神の知るところとなり、カインはその土地から追放させられた。
・アダムが130歳のとき、三男セトが生まれた。


大洪水とノアの箱舟


「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。
創世記6-7


・アダムの系図はのび人は増えたが、伴って悪徳悪行がはびこっていた。
・神は憂い、唯一敬虔なノアの一族を除いて、洪水を起こし人類を一掃しようと決める。
・ノアはセトから数えて8代目にあたる。
・事前に神から知らされていたノアの一族は、箱舟を建造し、難を逃れた。
・ノアの三人の息子、セム・ハム・ヤフェトは"現代の全人種"の祖先にあたる。


バベルの塔の崩壊


「これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。
創世記11-9」


・人類の技術が高まり、傲慢になり、天に届く塔を造ろうとした。
・神は、驕りの原因が共通の言語にあると考え「バラル(混乱させた)」
・移行人類はそれぞれの言語を話すようになった。
・有名な物語だが、時系列も誰が建造を試みたのかもよくわからない。






族長の時代

名称の整理

ヘブライカナンに住んでいた半農半牧のグループを指す客観的な名称
イスラエルイスラエル王国の人を指す名称
ユダヤ本来は「ユダ族の血を引くもの」を指す名称
後に、北イスラエルの滅亡によってユダヤ人以外のイスラエル人がいなくなったので、「イスラエル人=ユダヤ人」になりました。
現在では「ユダヤ教を信仰する人」という意味も加わっています。



主要人物の関係図

聖書には非常に多くの人物が登場します。読み難い原因の一つだとも思いますが、逆に主要な人物の関係を把握することが理解のための近道でもあります。以下の図の番号に沿って、おおまかな流れを辿っていきます。





1.アブラハム

・ノアから数えて11代目
・神からの啓示を受けて、一族を抜け「カナンの地*2」へ向かう。
・奴隷ハガルとの間に第一子イシュマエルが産まれる。
・妻サラとの間に第二子イサクが産まれる。
・イシュマエルを放逐、アラブ人の祖先になる。*3

2.ヤコブ

・イサクの息子、兄エサウとの二人兄弟。
・兄エサウは狩人、ヤコブは天幕の周りで働く人
・肉を好んだ父イサクは、兄エサウを愛していた。
・母リベカの手引きもあり、父兄を騙す形で長子権を簒奪する。
エサウの殺意から逃れるように20数年放浪、後に和解する。
ヤコブの12人の子どもは後の「イスラエル十二支族」の始祖となった。


3.ヨセフ

ヤコブの十一男、父ヤコブに溺愛されていた。
・嫉妬した兄たちにエジプトで奴隷として売られてしまう。
・エジプトで能力を発揮、ファラオに取り立てられ莫大な権力を得る。
・飢饉のためカナンから逃れてきたヤコブ一族をエジプトに受け入れる。

4.モーセ

・レビの曾孫
・ヨセフの威光は薄れ、一族は捕虜や奴隷のように扱われていた。
・川に捨てらたモーセは、エジプトの女王によって拾われ、育てられる。
・成長したモーセは、神の啓示を受け、一族をカナンへ導くための指導者になる。
・エジプトに「10の災い」を与えて、出エジプトを果たし。
・道中のシナイ山で神から「十戒」を授かる。
ヨシュアを次期指導者に任命し、カナンに入ることなく死ぬ。

5.ヨシュア

・ヨセフの系列だが詳しいことは不明。
ヤコブ一族がエジプトに移り住んで既に数百年、当然カナンには国ができていた。
ヨシュアは、これを制圧・占領した軍事的な英雄だった。
・占領したカナンは「イスラエル十二支族」によって12分割統治された。

6.ダビデ

・ユダから数えて10代目
・外国*4の脅威に押され、王制を求める世論が高まる。
・初代王のサウルの統治は上手くいかなかった。
・二代目ダビデ統一国家イスラエルを建国、首都をエルサレムとした。*5
・現イスラエルの国旗にもある六芒星は「ダビデの星」と呼ばれている。
・しかし、晩年は他人の妻と姦淫するなど、多くの大罪を犯した。

7.ソロモン

ダビデの息子
・激しい王位継承争いを勝ち抜き王位に着く。
・この時代イスラエル繁栄を極める。
エルサレム神殿を建設する。
・多くの妻のなかには異教徒もおり、晩年のソロモンは異教に心が揺れていた。
・それが原因*6でソロモンの死後、王国は南北に分割する。

8.レハブアム

・ソロモンの息子
・レハブアムは南王国(ユダ王国=ユダ族とベニヤミン族で構成)の王となった。
・一方、ヤロブアムは北王国(北イスラエル王国=上記以外の10部族で構成)の王となった。


・紀元前721年 - 北イスラエル王国アッシリアに滅ぼされる。
・紀元前612年 - 南のユダ王国新バビロニアに滅ぼされる。

メシア思想の高まり

その後、支配国も度々変わり何度かの反乱も実らず、境遇はより苛酷になり、出エジプトを為したモーセイスラエル国を建国したダビデのような救世主を待望する声が高まっていきます。

こうした不穏な状況を背景に、ナザレの人イエスが誕生します。

*1:そのうち文体になおすかもしれません。

*2:パレスチナ

*3:ムハンマドの正当性がここにある。

*4:ペリシテ

*5:ここが現在の
パレスチナ問題につうじる

*6:と聖書にある