【覚書】『日本の歴史をよみなおす』全
2011/12/23
日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫) 網野 善彦 文庫: 409ページ 出版社: 筑摩書房 (2005/7/6) 言語 日本語 ISBN-13: 978-4480089298 発売日: 2005/7/6 商品の寸法: 14.8 x 10.4 x 1.4 cm Amazonで詳しく見る |
目次
【日本の歴史をよみなおす】
- 文字について
- 貨幣と商業・金融
- 畏怖と賤視
- 女性をめぐって
- 天皇と「日本」の国号
【続・日本の歴史をよみなおす】
- 日本の社会は農業社会か
- 海からみた日本列島
- 荘園・公領の世界
- 悪党・海賊と商人・金融業者
- 日本の社会を考えなおす
雑感
本書は「日本の歴史をよみなおす」と「続・日本の歴史をよみなおす」を一冊にまとめて文庫化したもの。網野善彦の著作ながら、筑摩書房の社員を対象にした話を"若い人"に向けて編集したとのことで非常に読みやすく纏まっている。
本書は通史ではないが、歴史を学ぶ楽しさと心構えを知ることができる。
二世代も歳が離れれば話が合わない。確かに「レプラ」「癩病」と言われてもピンとこない、「ハンセン病」と言われてようやく知識として知っている程度である。私たちは"便所の怖さ"を知らないし、私よりも若い世代では和式の便器を使ったことがない人も少なくない。
つまり、たかだかが50年で前提になる環境がこんなにも異なる。加えて、歴史には「南北朝の動乱」や「明治維新」などの"転換期"がある。1000年前の"異質な世界"の文化や社会など"現代の常識"を持っては及びもつかない。
例えば、漢字・ひらがな・カタカナという三種類の文字が日本の文学や歴史のなかでどのような機能を果たし、いかなる意味を持ってきたのか。女文字としての平仮名、明治時代から頻繁に使われるようになった片仮名。これらは歴史的にどのように使い分けられてきたのか?
和同開珎が鋳造されたのが8世紀、しかし簡単に貨幣経済は浸透しなかった。貨幣経済の仕組みは難しい、加えて銭は食べられない。15世紀になっても銭は呪術的な道具なり、それ自体が神聖なものとされていた。
あるいは、市場が開かれる場所も地理的やら"現代の常識"に沿った理由を考えがちだけれど、「虹が立った場所」「川の中洲・河原・浜・坂」など"特別な呪術的な意味"を持った場所だった。
差別問題・女性の社会的地位・天皇制・百姓と農民…思想は自由であり、侃々諤々の議論は結構。但し、歴史を曲解したり捏造してしまうのはよくない。感情的になるほど"現代の常識"に囚われる。冷静に、まずは歴史から学んでから。