【読了】『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論』
2011/9/14 読了 ★
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目次
覚書
本書は、アトキンス先生の書いた教科書ではない。
サイエンスライターの名手「ピーター・アトキンス」が、現代科学の10の主要理論のエッセンスを抽出し、高度に抽象的な超越的思考を格調高い言葉で綴った一般書である。
以下、章ごとに。
- 1. 進化 ―複雑さの出現 :進化は自然選択によって生じる。
生命とは何か?
例えば、古代ギリシャの哲学者「エンペドクレス(BC490〜BC430)」は、動物は普遍的な部品の一群で成り立っており、それらを様々に組み合わせてゾウや蚊やヒトができていると考えた。あの「アリストテレス」でさえも、生物は完全にできあがった状態で自然に発生したと考え、多くの宗教は今も大小問わず生命は神の被造物に過ぎないと考えている。
さて、空理空論ではない真の理解へと向かう第一歩は、データを集めること。つまりこの場合、地球の生物圏を構成する全種類の生物を特定・分類し、分析することが科学的な姿勢であるといえる。
分類の体系として最初に広く受け入れられたものは、スウェーデンの植物学者「カール・フォン・リンネ(1707〜78)」が著書『自然の体系(Systema Naturae)』と『植物の種(Species Plantarum)』で考案した自然界の構成員を階層的(ドメイン・界・門・網・目・科・属・種)に分類した"リンネの分類体系"である。
リンネの分類はあくまでも形態の類似異同の差異を根拠にしているだけで、根底にある類縁関係にもとづいているわけではないという問題点はあった。しかし、リンネの功績は大きく、実のところ網や門などの厳密な定義は《いったい何を持って「種」とするか?》という問題に比べれば根本的に重要ではない。"最小の分類"である《種》と《種》の差異こそが重要。
「種」とする定義には、「生物学的な種の概念」と「認識にもとづく種の概念」がある。前者は交配が可能であるか、後者は"表型的に"姿形のみを判断の条件とする。ただし、"生物のなかには交配をおこなわない種" も "表型的には事実上区別がつかないが交配できない種" もいる。つまり、残念ながらどちらの定義にも問題があり寄り添って継ぎ接ぎしているのが現状。
しかしながら、生物種がこれまで進化し、今なお進化の途上にあることは「化石記録」から疑う余地はない。もちろん化石も完全ではないが、種の進化には"小さな変更が蓄積されるもの"と"数千年の間に急激に進化するもの"があること。"進化の方向は必ずしも上向きではない"こと… 様々なことがわかる。
そして、「チャールズ・ロバート・ダーウィン(1809〜82)」がガラパゴス諸島での滞在から「優位な変異が保存されやすく、不利な変異は消失しやすい」ことを思い立ち、『自然選択、すなわち、生存闘争における有利な種族の保存による、種の起源について(On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life)』が誕生する。
自然選択説とは、自然環境が、生物に無目的に起きる変異を選別し、進化に方向性を与えるという説。前提として3つの原則にもとづいている。
1.遺伝性の遺伝子変異が存在する。
2.親は多めに子をつくる。
3.成功する子孫は環境に最も適応した者である。
…中略*1…
しかし人間は傲慢な生物である。創造論を嘲りながら、"アフリカは人類の揺りかごに相応しくない"と宣う科学者もいる。太古の人類史は錯綜しており、今なお断片をつなぎ合わせている最中なので、鵜呑みにしないよう注意が必要。
別章
2.DNA ―生物学の合理化 :遺伝形質はDNAに暗号化されている。
3.エネルギー ―収支勘定の通貨 :エネルギーは保存される。
4.エントロピー ―変化の原動力 :いかなる変化も、エネルギーと物質が無秩序…
5.原子 ―物質の還元 :物質は原子でできている。
6.対称性 ―美の定量化 :対称性は条件を絞り込み、指針となり、力となる。
7.量子 ―理解の単純化 :波は粒子のように振る舞い、粒子は波のように振る舞う
8.宇宙論 ―広がりゆく現実 :宇宙は膨張している。
9.時空 ―活動の場 :時空は物質によって曲げられている。
10.算術 ―理性の限界 :算術は、無矛盾ならば不完全である。
*1:いわゆる人類史に入ると、途端に政治や宗教が…