【読了】『サンタクロースの謎』

2011/9/12 読了

サンタクロースの謎 新版サンタクロースの謎 新版
賀来 周一

キリスト新聞社
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目次

第1章 サンタクロースはいるのか、いないのか
第2章 クリスマスの起源を探る
第3章 宗教的象徴となったサンタクロース
第4章 聖書に見るクリスマス
第5章 サンタクロースがやってくる

雑感

まず、クリスマスほどキリスト教にとって他宗教異文化を取り込んだ祝祭はない。
極端に言えば、クリスマスは本来キリスト教とは無関係のものだと言ってよいほどである。

伝播した土地での土着化は、時代問わずあらゆる宗教で望まれてきたことだった。包括できるなら理想的だが、軋轢は免れない。新興の宗教にとって異文化の中へ定着させるには、異なる習俗・習慣・文化・他宗教との調整が必要だった。

渡来宗教としての仏教が日本に定着し、大衆化する経緯を思えば幾らかわかり易いかもしれない。キリスト教も同様に、本来の発生地であるユダヤ社会から、異文化のギリシア・ローマ世界、さらにケルト民族やゲルマン民族の中への定着を臨んだ。

その手段として注視したのが土着の祭事であり、特に自然崇拝信仰にとって、極めて重要な「冬が終わり春が始まる日=冬至」であった。

つまり、太陽神信仰では「太陽神ミトラの誕生の日」であり、
農民社会では農耕神サトゥルヌスを祭神とした「サトゥルナリア祭の日」であり、
北欧ではオーディーンやトールの神々を讃える「ユールの祭りの日」である冬至に、
イエス・キリストの誕生の日を充てがうことで各々との調整を計ったのだろう。


なるほど、[Christ's Mass ≒土着信仰の残滓]なら"サンタクロース"の誕生も近代化も自然の成り行きに思える。

「クリスマスの前のばん
あしたは楽しいクリスマス
床下のネズミもひっそりと
静まり返った家の中
暖炉の前に靴下が
願いを込めてかけてある
『サンタクロースはくるかしら』…… 
(クレメント・クラーク・ムーア 中村妙子編訳『クリスマス物語集』より)」

確かに "近代サンタクロース" からは宗教性は薄れ、商業的でさえあるのかもしれない。
しかし、"子どものため"という根底は紀元前から変わらないのではなかろうか。