【雑感】『茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会』

目次

第一部 文化としての茶 ―緑茶 vs 紅茶

  • ヨーロッパ人の茶の発見
  • イギリスに定着した紅茶
  • 紅茶文化の光と影

第二部 商品としての茶 ―世界市場における日本の茶

  • 日本の開港と世界市場
  • 茶をめぐる日本の情報活動
  • 日本茶の戦いとその運命

雑感

現在「茶」を意味する世界各国の言葉は、広東語のCHAと福建語のTAYのニ系譜に大別できる。広東語系のCHAは陸路をへて、北方の北京・朝鮮・日本・モンゴル、西方のチベットベンガル・インドから中近東へ。福建語系のTEAは、厦門と直接貿易を始めたオランダの影響から、海路をへて西欧諸国へ入った。

呼称と同様に世界に伝播していった「茶」だが、本来は
同じように摘まれた茶葉が、途中の製造工程の違いによって、[ 発酵させないものが緑茶・発酵させたものが紅茶・発酵途中でとめたものが烏龍茶 ]とされていた。

もとは同じ" 茶葉 "にもかかわらず、今日の「茶」のシェアは80%が紅茶である。しかし、(「ヨーロッパ人は緑茶を知らなった。」やら「茶が運ばれてくる途中で、熱帯の暑さから発酵してしまった。」という俗説は根強いが・・・)イギリス東インド会社の記録から、ピークの17世紀末には緑茶がシェアの65%も占めていたことがわかる。

では、なぜ緑茶は飲まれなくなり、歴史的に後進である紅茶が躍進したのか?

特に、[オシャレな紅茶文化に憧れている人]や[緑茶は好きだが、紅茶を毛嫌いしている人]にお薦め。

とりあえず底の丸いポットと沸かしたてのお湯さえ使えば、茶葉も砂糖もミルクも適当で構わない。おいしい紅茶を飲みたいのなら、茶器や茶葉に無駄金を使う前に紅茶文化を知るための投資をするべきである。本書で「茶」の歴史を知るもよいし、ヴィクトリア時代に形成された紅茶文化も華やかでよい。アヘンと引き換えに手に入れた紅茶の味や紅茶色に染まったボストン港を想像するのもよい。

"どう淹れるか"ではなく"どう飲むか"で紅茶を味わう舌は随分と変わるもの。