【雑感】『「超」文章法 ―伝えたいことをどう書くか』

2011/6/1 読了  ★

「超」文章法 (中公新書)「超」文章法 (中公新書)
野口 悠紀雄

中央公論新社
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目次

 第一章 一言で言える「メッセージ」を見つける
 第二章 骨組みを作る(1) ― 内容面のプロット
 第三章 骨組みを作る(2) ― 形式面の構成
 第四章 筋力増強 ― 説得力を強める
 第五章 化粧する(1) ― 文章を分かりやすくする
 第六章 化粧する(2) ― 100回でも推敲する
 第七章 とにかく始める ― 始めればできる

雑感 "悪文"を読むために文章法を知る。

『「超」整理法』(中公新書 1993年)の著者・野口悠紀雄(1940-)による「超」シリーズの文章編。第一章でコンセプトを見つけ、第二章・第三章でプロットを組み、第四章で比喩や引用を使い説得力を増し、第五章・第六章で「わかりやすい文章」について学び、推敲する。このように本書に従って順に書き進めていけば、短文(1500字程度)でも長文(15000字程度)でも不思議と文章が出来上がる。まさに「論述文を書く際に使えるマニュアル」である。有用かつコラムや諸々のエピソードなど本書は見どころが沢山あるが、特に「第5章 -5 わかりにくい文章の書き方」が面白い。
 「わかりにくい文章」とは、例えば… 「……われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる……」(日本国憲法前文) この文章は、主語が複数あり相互関係がわかりにくい、「政治道徳の法則」とは何か、読点が多く必ずしも必要でない箇所にある…など、まさに「わかりにくい文章」の好例。学者や政治家でなくても責任回避をしたい場合や言い訳をしたい場合、内容の貧弱さを言い回しで繕いたい場合など、このような「正確であり、しかもわかりにくい文章」を書く必要に迫られることがあるかもしれない。何よりこの技術は、所謂"霞が関文学"のような「優れた悪文」や"意図せずに読みにくくなってしまった文章"を読む際にも役立つ。
 今は、クリック一つで官庁が発表している膨大な情報や様々な分野の論文が読める時代。また個人ブログやfacebookmixi などSNSの台頭により個人の文章を読む機会も爆発的に増えた。それらは、"悪文"と切り捨てるにはあまりにも惜しいアイデアの宝庫である。現代は"わかりやすい文章を書く能力"だけではなく"わかりにくい文章を読む能力"こそ必要なのではないだろうか。そして、その能力はわかりやすい文章を書くことによって得られる余禄だったのだ。
 『「超」シリーズ』はどこかあざとい気がして、『「超」整理法』以外の著書は読んだことがなかったのだが、偏見はいけない。本書も非常に面白かった、食わず嫌いをせずに他の著作も読んでみよう。