【読了】『理想の児童図書館を求めて―トロントの「少年少女の家」』
2011/5/21 読了
理想の児童図書館を求めて―トロントの「少年少女の家」 (中公新書) ・桂宥子(1947-) ・中公新書 ・1997/10/15(第一刷発行) ・192頁 Amazonで詳しく見る |
雑感
短い子ども時代に駄作ばかり読んで過ごすのは残念である。子どもたちが良書にたくさん触れて、想像力を養い、精神的に豊かに成長するためには、本と子どもの橋渡しをするプロの児童図書館員や司書教諭が必要である。世界の児童図書館を常にリードしてきたトロントの「少年少女の家」にただひとり日本人司書として勤めた著者が、理想的な児童図書館の理念と実際を、経験を通して記録し、日本の児童図書館にいま望まれる姿を提言する。
子どもの世界の物語を大人が楽しむことは、そう難しくはない。しかし、楽しめるからと"良い本を子どものために選べる人"になれるわけではない。
イメージ通りの優しい文体、まるで"文学少女が憧れの人に送った手紙"から始まる物語を読んでいたようだが、「少年少女の家」や著者の児童文学に対する哲学は厳しい。
百年前に書かれた古典でも初めて読む子どもにとっては新しい本であり、『不思議の国のアリス』や『指輪物語』などの名作も試金石にすぎない。全集やシリーズものでも一巻一巻吟味し悪い巻は排除される…子どもの本を読む子ども時代は短い、従って駄作を読む時間は惜しい、その為には訓練を受けた児童図書館員が必須だと著者は主張する。
随分問題があったらしい日本の図書館システムは、14年後の今は改善されただろうか。