【読了】『アーロン収容所 ―西欧ヒューマニズムの限界』

2011/5/3 読了 ★

アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 (3))
会田 雄次

中央公論新社
会田雄次(著)(1916-1997)
中公新書
・1962/11/15(第一刷発行)
・235頁

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目次

 ●捕虜になるまで
 ●強制労働の日々
 ●泥棒の世界
 ●捕虜の見た英軍
 ●日本軍捕虜とビルマ
 ●戦場と収容所 ―人間価値の転換
 ●帰還

雑感

ビルマ英軍収容所に強制労働の日々を送った歴史家の鋭利な筆はたえず読者を驚かせ、微苦笑させつつ西欧という怪物の正体を暴露していく。激しい怒りとユーモアの見事な結合がここにある。

京大卒・万年初年兵

本書は終戦直後から昭和22年5月までの1年9ヶ月、ビルマにおける英軍捕虜としての著者の体験記。曰く、捕虜時代に書き綴った文を適当に継ぎ合わせたようなものであり、その後英国に対し考え方を一部変えたところもあるが、敢えて当時の気持そのままを記したとのこと。

批判の説得力

この英国への批判の説得力は、自国への批判と反省があるからこそ。センセーショナルな一例の引用だけでなく、一冊を通して読むべき価値がある。
英兵から家畜のごとく扱われた日本兵が、一時前までビルマ人の青年を、やはり家畜のように思っていた。日本軍部の腐敗は酷く、連日連夜ビルマ慰安婦を侍らして泥酔している士官もいた。しかし中には楠公精神を持って、理想に殉じた将校もいた。

アメリカやロシアの捕虜待遇との比較も興味深い。本書ではイギリス人・インド人・グルカ人・ビルマ人など、歴史を背景に多様な民族が登場する。中での人人の違いは当然あるが、やはり宗教、風習、環境…諸々が加わった所謂民族性があった。

要求される能力

人間の能力や才能には種々の型があり、異なった歴史条件が異なった才能を要求し、その型の人物で傑出し、かつ運命に恵まれた人物だけが活躍した。武勇や知略が尊ばれた戦中から一転、捕虜生活では"泥棒の才能"が求められた。