マーク・トウェイン『王子と乞食』

2011/4/9 読了 ★

王子と乞食 (岩波文庫 赤 311-2)王子と乞食 (岩波文庫 赤 311-2)

岩波書店
マーク・トウェイン(著)(1835-1910)
村岡花子(訳)(1893-1968)
岩波文庫
・1934/7/25(第一刷発行)
・307頁

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目次

 01 王子と乞食の誕生
 02 トムの成長
 03 トム、王子に会う
 04 王子の苦難
 05 宮殿のトム
 06 王子の練習
 07 食卓のしくじり
 08 玉璽のゆくえ
…略…
 34 正しき報い

雑感

うりふたつの顔だちをした、同じ年の王子エドワード6世と乞食トム・キャンティがふとしたことで入れ替わる。ボロ服で街へ放り出された王子は苛酷な国法に悩む庶民生活の貧しさを、乞食は馬鹿げた宮廷の制度や生活を身をもって体験する。痛烈な諷刺とユーモアに満ちたマーク・トウェイン1881年発表の傑作。

文頭にある「あらゆる時代の若い人々のための物語」は「子ども向けの本」という意味ではない。物語の筋は非常にきれいで、人物の対比や王子とトムの視点の切り替わりも面白く、ついページを遡って確認してしまうような見事な伏線も多い。

但し、『ハックルベリー・フィンの冒険』や『トム・ソーヤーの冒険』と比べると痛烈な諷刺が目立つ。アゴタ・クリストフの『悪童日記』でも同じことを感じたけれど、子どもの視点から皮肉った世情というものは、子どもの純粋さも相まって、とことん汚い。

見落としている表現は多いだろうが、どうも腑に落ちない妙な読後感が残る。

ふと思いだした、チャップリンの『独裁者』も容姿がそっくりな身分・立場が違うの人間の物語だが、1940年が初公開らしいので幾らかは影響を受けているのかもしれない。