【美の巨人たち 感想】 曾我蕭白 「雲龍図」


2013年3月9日 放送



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今週の芸術家


・作者 曾我蕭白(1730―1781)
・国籍 日本
・職種 画家


1730 1歳 京都の商家「丹波屋」の子として生まれる。
1740 11歳 兄が夭折する。
1743 14歳 父・吉右衛門が亡くなる。
1746 17歳 母ヨツが亡くなり、丹波屋が潰れる。
1759 30歳 伊勢地方 黒田村の浄光寺で一年ほど滞在する。
1761 32歳 寒山拾得図 (京都・興聖寺)」
1763 34歳 雲龍図」
1764 35歳 「群仙図屏風」2005年に重要文化財指定
1772 43歳 京都に居を構える。
1777 45歳 息子が夭折。
1781 49歳 蕭白が亡くなる。法名「一輝蕭白居士」。


今週の作品


・作品 雲龍図(1763年)
・場所 ボストン美術館
・縦横 165.6cm×135.5cm
・材質 紙本墨画


左の画面いっぱいに迫力満点の龍が描かれています。しかし、じっくりと眺めてみると、その表情はどこかユーモラス。龍の爪は太く力強い線描で描かれています。ところどころに飛び散る飛沫の激しさ、凄まじさ。その傍らには墨特有の滲みと濃淡で生み出した雲が、不穏な空気を漂わせています。画面右には、うねりをあげた尻尾。波をかき分けるように跳ねています。

雑感

縦165cm、横10.8m、巨大で非常に迫力ある水墨画です。
もとは禅宗寺院の襖絵として描かれたようですが、ボストン美術館に収められたときに、剥がされた状態で保管されたそうですね。

この絵もビゲロー氏によって救われた日本画の一つなのですが、残念ながら2軒分の襖が失われてしまっているそうです。そして美術史家の辻惟雄*1によると「失われた絵には、胴体が描かれていたのではないか…」とのこと。

まるで「ミロのヴィーナスの腕」のようです。残念ではありますが、失われた箇所を空想するのは面白く、作品により深みを与えてくれる気さえします。

*1:美術出版社の『日本美術史』や『日本美術の歴史』の人ですね。