ひろさちや『やまと教』

2012/2/9

やまと教―日本人の民族宗教 (新潮選書)やまと教―日本人の民族宗教 (新潮選書)

ひろ さちや

単行本: 215ページ
出版社: 新潮社 (2008/07)
発売日: 2008/07

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目次

第1章 宗教とは何か?
第2章 仏教の伝来と神道
第3章 神道とやまと教
第4章 やまと教の神々
第5章 神様との付き合い方
第6章 神様は「空気」である
第7章 やまと教の教義

雑感

どうも、著者は平易な文章と解説で人気な仏教者らしい。
確かに読みやすいけれど、それだけに山本七平の「日本教」との比較を期待すると少々肩を透かされる。

さて、本書の主張は、「日本人の持っていた(いる)民族宗教を"自覚"するべきである」、といったものである。

この民族宗教、つまり神道のことを著者が「やまと教」と変名したわけだが、その理由は、「神道」から連想される「国家神道」が気に食わないといったものなので、その区別がついているなら、素直に「神道」としたほうが紛れがない。

整理のために大雑把に分類すると、以下の3つになる。

  1. 古代日本人の民族宗教
  2. 天皇を祭祀とした神道
  3. 天皇を現人神とした国家神道

それぞれが別個の宗教というわけではなく、2と3は、1から派生するかたちで作られ、時代が降るにつれ政治色が強くなるのが特徴といえる。

それぞれの特色と「神道の残滓」をザックリ把握するには、本書は実に適している。


但し、2点。

  1. 「やまと教」は新しい概念ではなく単に「"古代"の神道」を言い換えただけであること。
  2. 第二章の冒頭で「日本教」との違いを示唆しておきながら、第六章で「空気」という表現を多用したこと。

このあたりは、期待していただけに残念だった。