【雑感】『グリム童話の世界 ―ヨーロッパ文化の深層へ』

2011/9/1 読了 ★

グリム童話の世界―ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書)グリム童話の世界―ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書)
高橋 義人

岩波書店
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目次

序章 メルヘンとは何か
第1章 「シンデレラ」変身譚
第2章 冬を追い払い、夏を招くシンデレラ
第3章 「眠れる森の美女」よりも神話的な「いばら姫」
第4章 「ホレおばさん」からサンタクロースへ
第5章 「白雪姫」の魔法の鏡の謎
第6章 楽園を追われたラプンツェル
第7章 「蛙の王さま」と「鶴の恩返し」

雑感

洋の東西を問わず、ネットやテレビはおろか印刷技術もなかった時代に童話や民話は民衆の大きな娯楽だった。
それらは土着的な神話や信仰に依拠していた"メルヘン"であり、キリスト教的な世界観とは水と油の関係であったことは想像に難くない。

しかし、敬虔なキリスト教徒だった「グリム兄弟」が異教的な文化である"メルヘン"の蒐集に執着したのは何故だろうか。

グリム童話からキリスト教以前のヨーロッパ土着信仰を覗く良書。

「グリム兄弟」が口承文芸を文字に起こした仕事の恩恵は計り知れないが、一方で、語り手によって話が微妙に変えられていく流動性・庶民性・匿名性、といった「声の文化」的な特質は失われてしまった。