【美の巨人たち 感想】 ベルニーニ 「アポロンとダフネ」

2013年12月15日 放送


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今週の芸術家


・作者 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680)
・国籍 イタリア
・職種 彫刻家・建築家


1598 0歳 彫刻家を父にイタリア南部の町ナポリに生まれる。
1605 7歳 父の仕事の関係からローマに移住
1615 16歳 彫刻『雌山羊アマルティア』作成。天才の片鱗が見て取れる。
1622 23歳 彫刻「アポロンとダフネ」製作開始。
1624 25歳 建築「サン・ピエトロ大聖堂祭壇天蓋」着工。
1625 25歳 彫刻「アポロンとダフネ」発表。
1629 30歳 ローマ教皇庁の建築家になる。*1
1633 34歳 建築「サン・ピエトロ大聖堂祭壇天蓋」完成。
1639 40歳 Caterina Tezioと結婚、11人の子供をもうける。
1647 48歳 彫刻「聖テレジアの法悦」作成開始。
1652 53歳 彫刻「聖テレジアの法悦」発表。
1656 57歳 建築「サン・ピエトロ大聖堂列柱廊」着工。
1665 66歳 ルイ14世に招かれて、パリ訪問。*2
1667 68歳 建築「サン・ピエトロ大聖堂列柱廊」完成。
1673 74歳 妻、死去。
1680 81歳 死去。


今週の作品


・作品 アポロンとダフネ(1622-1625)
・場所 ボルゲーゼ美術館
・高さ 約2m50cm
・材質 大理石


入り口から眺めると、走る男の背中が飛び込んできます。
気になって近づいていくと、男の前には女の後ろ姿が…
二人はなにをしているのか。
さらに回りこんでみると…
鑑賞者は、ここではじめて、手や髪の毛が月桂樹の葉に変身していく劇的なドラマを目撃するのです。
見るものが歩き、視点を移動させることで展開していく物語。
これこそが彫刻家が目指した、理想の劇場だったのです。

雑感

モチーフとなった、「アポロンに求愛を迫られ自らの身を月桂樹に変える話」は、ギリシア神話の中でも有名なものだそうです。アポロンは眉目秀麗な青年で、神としての格も高い、という印象があったので、こういった失恋話?は少し意外でした。

それにしても驚いたのは、ベルニーニの表現力と超絶技巧です。導線を利用した物語の構成とあの瞬間的な表情や動作の表現、この組み合わせを是非体感してみたいものです。

後の名作「聖テレサの法悦」では、まさに建築と彫刻を組み合わせ、現実の光を巧みに取り入れて、作品世界を構築しています。

稀代の彫刻家であり、一流の建築家でもあるベルニーニだからこその業なのでしょうか。

*1:ウルバヌス8世は「ベルニーニはローマを必要とし、ローマはベルニーニを必要とする」という言葉を残した。

*2:ルーブル宮東正面の設計を命じるが、ルーブル美術館の強い反対により実現せず。