日本語について / 和田利政『国語要説』
帯
国語について、組織的・体系的な面の大要を述べている。国語に関する項目・術語を重点的にとりあげ、それぞれに簡潔な説明をほどこすよう努めている。必要に応じて、図版・写真等を掲げ、具体的な事例を通じて内容の理解や特色を知ることができるように心掛けている。また、説明の補助教材・資料として、巻末に数種の付表を添えている。
序説
言語は、人物特有の活動で、一定の音声に一定の内容を連合させて、表出・伝達をはかるものである。これを補うものとして文字が発達した。しかし、文字そのものをもたない言語も多い。
日本語とは、日本国の公用語で日本民族が少なくとも千数百年以前からもっぱら使用している言語である。日本人が、自分たちの言葉という意味合いで日本語さしていうとき、国語という。
文字
聴覚器官にうったえて伝達をはかる音声の代りに、視覚にうったえる平面図形の一揃いが言語記号となったものを文字という。文字には、漢字などのように一字が音と意義を備えた表音文字と、ローマ字のように単音または音節に対応する表音文字とがある。
わが国における文字の使用は、漢字伝来をもって最初とする。
漢字を伝来の中国語の発音に基づいて読むものを、音という。伝来した発音は時代や地域によって差があった。
・呉音
・漢音
・唐音
漢字をその意味に対応する国語で読むものを、訓という。
漢字を2字以上に組み合わせ、一つの国語に対応させるものを熟字訓という。
音と訓を複合してできた語を混種語という。
混種語のうち、上が訓、下が音のものを重箱読みという。
混種語のうち、下が訓、上が音のものを湯桶読みという。
「かな」はわが国で発展した表音文字である。漢字を「真名(まな)」と呼んだのに対して、「仮名(かりな・かんな)」と呼んだことに由来する。仮名には、万葉仮名・平仮名・片仮名の三種がある。
・万葉仮名 漢字をその意味とは関係なく、国語を書き表すための表音文字として用いたものを万葉仮名という。
・平仮名 万葉仮名の草書体である草仮名が、簡略化され固定していったもの。
・片仮名 万葉仮名の一部を書くことによって成立したもの。